抄録
富山県氷見市を中心とするボカスギ林業地は明治期から昭和中期にかけて造林され、主に電柱材として利用されてきた。ボカスギ林業の特徴は短伐期施業である点、および植林後数年間、株間に作物を育てる間作を行っていた点である。しかし、間作の具体的形態やルールに関する記録やその文化的評価についての研究は限られている。林業遺産に代表されるような伝統的林業技術への関心が高まる中、地域林業が有する価値を明らかにすることはその保全や活用を進めるうえで重要なステップである。
本研究ではボカスギ造林地における重層的な土地利用の実態と価値を明らかにするため、既存の文献資料の分析や氷見市仏生寺大覚口集落での住民への聞き取り調査を行った。
昭和中期頃の仏生寺大覚口集落では個人所有の山林約10 haが、間作を伴うボカスギ造林地として利用されていた。当該山林では集落内の女性が間作により農作物を収穫し、森林所有者は下草刈りやつる伐り等の管理の手間を省くことができた。利用は固定されたメンバーシップに限られており、耕作地が限られる山村での食料生産を補完しつつ、育林の労力を軽減する関係を形成していた。
本文言語 | 日本 |
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ページ(範囲) | 97 |
ジャーナル | The Japanese Forest Society Congress |
巻 | 134 |
号 | 0 |
DOI | |
出版ステータス | 出版済み - 2023/05/30 |