森林景観の保全における文化的景観概念の役割

研究成果: ジャーナルへの寄稿学術論文査読

抄録

森林景観の取り扱いは,常に安定した政策の上で進められてきたわけではない。時代の要請や都合,他分野からの注目によって受動的に扱われてきた面も強い。本稿では,近代以降の森林景観保全の動向を整理しながら,とくに「文化的景観」という概念がこれからの森林景観の保全と創造にどのような役割を果たすのかを議論することを目的とした。2005年の景観法施行によって,景観保全の基本的な考え方は,保全意志のある地域に適切な権限を与えることで地域特性にあったルールで運用する仕組みに変化した。そして,文化財保護法改正によって景観法とセットで登場した文化的景観概念によって,従来の法制度の主流であった「凍結型保存」に対して,生業や風土からなる「システム」自体の維持,継承に重きを置く「動態的保存」を図る仕組みが整った。森林・林業を中心に据えた重要文化的景観は,2018年に選定された「智頭の林業景観」が最初であり,森林・林業と文化的景観概念の関係は始まったばかりの段階にある。景観の本質的価値を読み解くことで,継承すべき生業や地域づくりの軸を作り出すという,文化的景観概念の本来の使い方を探っていく必要がある。
寄稿の翻訳タイトルRoles of Cultural Landscape Concept for Conservation of Forest Landscape in Japan
本文言語日本
ページ(範囲)39-48
ページ数10
ジャーナル林業経済研究
65
1
DOI
出版ステータス出版済み - 2019
外部発表はい

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