抄録
この論文では,効率性仮説と平穏仮説の理論的含意を,Homma(2009,2012)によって構築された一般化使用者収入モデルに基づきながら明らかにする.コスト・フロンティア上の拡張された一般化ラーナー指数(以下,EGLI)に基づく分析結果からは,少なくとも理論的には両仮説の両方もしくはどちらか一方の成立・不成立が望ましい場合も望ましくない場合も存在し,(1)平穏仮説の成立による独占禁止政策の正当化ができないケースがあること,ならびに,(2)効率性仮説の成立が望ましくないケースにおける新たな産業組織政策の必要性が示唆される.さらに,コスト・フロンティア上の単一期間EGLIに異時点間規則的連鎖が存在する場合,長期的視点から産業組織政策の必要性を判断しなければならない.また,こうした異時点間規則的連鎖が上昇傾向(競争度の下落傾向)を示し,それが主として単一期間市場集中度(ハーフィンダール指数)の異時点間規則的連鎖の上昇傾向によってもたらされているのであれば,長期的な観点から独占禁止政策は正当化される.しかしながら,単一期間動学的費用効率性もしくは計画された単一期間最適金融財の異時点間規則的連鎖からもたらされているのであれば,長期的には独占禁止政策は市場に不必要な歪みをもたらす可能性があり,それ以外の政策が望ましい.
本文言語 | 日本 |
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ページ(範囲) | 1-85 |
ページ数 | 85 |
ジャーナル | Working Paper, Faculty of economics, university of toyama |
巻 | 316 |
DOI | |
出版ステータス | 出版済み - 2018/05 |
キーワード
- 効率性仮説
- 平穏仮説
- 一般化使用者収入モデル
- 拡張された一般化ラーナー指数
- コスト・フロンティア
- 動学的費用効率性
- 異時点間規則的連鎖
ASJC Scopus 主題領域
- 経済学、計量経済学および金融学(全般)