プロジェクトの詳細
説明
遺構の焼土の熱残留磁化が過去の地磁気を記録する特性を利用する年代研究が考古学で活用されている.土器,陶磁器は,焼土より安定な磁化を持っているが,焼成後に移動するので地磁気方向の研究には使えないとされてきた.しかし焼成時に水平に置かれておれば,磁化は地磁気伏角を記録している.本研究では,土器・陶磁器の底部片の磁化から伏角を求める方法を検討し,精度を高めて年代・産地研究に利用する.磁化利用はまた,土器・陶磁器の破片の製品復元にも利用できる.考古学に貢献する,土器・陶磁器の破片を用いる磁化研究法を開発し,方法を役立てられる国内外の試料で研究を行う.
Outline of Annual Research Achievements土器・陶磁器は生成時(焼成時)に地磁気ベクトルの記録として残留磁化を獲得する.生成後に移動するので,地磁気の方向の偏角は不明になるが,伏角については焼成時の水平面がわかれば求めることが可能である.またテリエ法等の実験により地磁気強度も復元できる.本研究では,土器・陶磁器の破片資料で,水平面が推定可能な底部等の部位を用いる地磁気年代の研究法の開発を一つの目的としている.また別の磁性として帯磁率を用いる土器・陶磁器の有効な研究も目指して研究を進めている.本年度は,昨年度行った富山県内の遺物に加えて,北海道の遺物も研究した.考古学の年代が曖昧なものもあったが,磁化伏角の利用について予察的に良い結果が得られた.新たな研究として,主に窯跡等の焼土の磁化で行われている考古地磁気研究について,窯内から採取されて埋蔵文化財セターや博物館に多く保管されている焼台・窯道具が資料として利用できるかを実験で検討し,有用であることを確認した.また,珠洲焼を対象に帯磁率による胎土や成形時の状況の研究を行った.遺構出土の珠洲焼壺について帯磁率を詳細に測定した結果,壺の下部から上部までの部位で測定値に有意な変化が見られた. 比較として研究した越中瀬戸焼の壺等ではそうした傾向はなく,珠洲焼固有の特徴と考えられる.肩部に高い帯磁率を持つ壺については,強度を保つため,成形途中で中断して胎土を変えた可能性が示唆された.帯磁率の詳細研究は,土器・陶磁器の新たな情報源になると考えられる.
ステータス | 終了 |
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有効開始/終了日 | 2020/07/30 → 2023/03/31 |