新型コロナウイルス感染症の拡大に係る法制度及び政策事例について (諸外国における野生動植物種の取引規制のあり方について)「野生動物および家畜等の輸出入に係る法制度及び政策事例について―東南アジア」(環境省請負調査)

Research output: Working paper

Abstract

新型コロナ対策に係る水際対策についての先進諸国調査である。シンガポールにおける野生動物、生きた家禽・家畜、ペットア二マルの輸出入に関し、動植物の多くは国立公園庁(NParks)が、食品はシンガポール食品庁(SFA)がそれぞれ所管している。NParksの「動物鳥類法」(Animals and Birds Act)が日本における外来生物法に該当すると思われる。SFAも、この動物鳥類法に基づき、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)およびH5およびH7低病原性鳥インフルエンザ(H5/H7 LPAI)等に対する監視厳しい監視を行いながら、生きた家禽・家畜の輸入規制を行っている。さらに、バイオセーフティ対策として、サーズ(SARS)克服後に制定された「生物剤および毒素法(BATA)」もあり、省庁間の連携のみならず産官学が連携してその推進に当たっている。全般に、「クリーンリスト(ホワイトリスト)」などを利用した緻密な事前配慮措置が行われており、規制権限も強い。これらの法律の規律密度の高さおよび規制権限の大きさは、やはり高病原性鳥インフルエンザおよびサーズ等を克服した経験に基づくものと考えられる。そのため、今般のCOVID-19への対応については、現行法で対処しており、法改正の動きは確認できない。
また、日本は、東南アジアからのペット用のエキゾチックアニマルの輸入が増加している。日本の検疫は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」、「狂犬病予防法」に基づくため、公衆衛生を目的としており、輸入禁止されている種および検疫が必要な種は一部にとどまる(多くの種は「輸入届出制」である)。そのため、密輸された個体も、どこから来たものかわからないままに、合法的に販売がなされてしまう(ロンダリング:洗浄)ことにより、未知のウイルス感染の危険は高まっているとの指摘がある。
Original languageJapanese
Pages93-125
StatePublished - 2021/03

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